高血圧は循環器疾患?

高血圧の患者さんの中に、ある種のホルモンに原因がある方がいます。高血圧は心臓の病気のように思われていますが、強いて言えばホルモンの病気です。ホルモンといっても、もちろん食べるホルモンとは関係ありません。ある細胞から分泌されて別な組織にはたらく蛋白という意味のホルモンです。特定のホルモンが多い人だけが高血圧になるというような単純な話ではありませんので、簡単には高血圧の本態を説明できませんが、少なくとも心臓の病気で血圧が上がることは多くはないはずです。


仮に原因が分った場合、ホルモンを出している部分を手術すべきかどうかが問題です。「えっ、高血圧の手術?」と驚かれるかもしれませんが、手術すれば薬が不要になる可能性があります。アルドステロンというホルモンが有名ですが、残念ながら手術をした場合としなかった場合で予後がどれくらい違うのかが分っていません。手術には思わぬ害もありえますから、単純に切れば良いとは限りません。

薬の治療だけではホルモンの強い作用を抑えきれないこともあります。ホルモンの作用が強烈で、普通の血圧の薬でコントロールするのが難しい場合は、経過を見ている間に動脈硬化ができあがってしまうかも知れません。カテコールアミンというホルモンを大量に分泌している時は、飲み薬では治療が難しいでしょう。

レニン、アルドステロン、ACTH、カテコールアミンなどのホルモンは採血の条件によって値が大きく変動するので、何も考えずに採血すると全くの無駄になります。細かい注意が必要ですが、なかなか現場に浸透しないようです。

一般的ではないかもしれませんが、私は高血圧の人は腹部エコー検査も必要だと思います。もしかするとホルモンの検査より大事かもしれないと思うくらいです。一般検診や人間ドックでもエコーをしますが、普通は消化器科の先生か検査技師がしますので、ホルモンを出している部分をねらっては検査しません。ねらって検査しないと見逃します。

血圧が高いなら薬を飲めばいいと考えている人が多いと思いますが、高血圧は経過が長いので、将来まで考えた治療が望ましいと思います。何を検査するかは実は難しいのですが、少なくとも非常に血圧の高い方は最低限の検査はしておいたほうが良いと思います。




平成18年8月診療所便り  院長 橋本泰嘉